端くれファンの書き留め

∞さんのファンの端くれの書き留めです。

蜘蛛女のキス 観劇感想

※以前ぷらいべったーにあげていたものを移動しました。



蜘蛛女のキス 観劇感想

※注意※
・ネタバレあり
・レポートではありません。未観劇の方には特にわかりづらいかと思われます
・個人的主観、観点で観た、偏った感想です
・以下の感想に出てくる劇中のセリフなどには曖昧な点がございます。決して正しいセリフではございません。ご容赦ください
・普段文字に触れない人間が書いている拙い記録です

簡単プロフィール
・新規エイター(大倉さん推し
・舞台沼出身(アイドルを推すのは初めて)

以上を踏まえた上でお読み頂けると幸いです




【蜘蛛女のキス 観劇感想】
観劇日…6/4,6/10,6/18





もし、一言で私の感想を述べるなら、
「最後に優しい気持ちになる舞台。」
でした。

優しい気持ちになれるからこそ悲しくなる舞台だなぁと…
2人の気高さを見届けた上で、モリーナの誇らしい生き様を知ったうえで、ただただ悲しんでしまうのは、なんだか、違うような、そんな気がした。
悲しんで欲しい物語じゃないような気がした。

元々相当何かとリンクしない限り登場人物、特にメインキャラクターに感情移入しないタイプで、俯瞰で見る事が多くて。
俯瞰に見るタイプのキャラがいるととても移入しやすいんだけど、今回もちろんそんな役ドコロはなくて。刑務所の天井として見てる感じ。だから、イチ入所者の刑務所での物語をただただ見て、居なくなってくのを追うでもなく、見送る、そんな感覚でした。


政治犯というものがどういったものかはわからないし、あまりにも知識が足りない事やデリケートな事だから、誤解や誤認を与えてしまったら申し訳ないのですが、ヴァレンティンの組織での話の中に、実行役?的な、実践的な役割があるというのを聞いて、
今、現実の、このご時世にこれをやる意味、深さがあるのでは…?という事も少し脳裏をよぎりました。
ジェンダーレスが認められつつある?そういった運動が多くなっている?型になってる?世の中の一方、テロとか、過激派組織とか、そういった面とか…
あれ、この物語は、いったいいつの時代のお話…?本当に昔のお話…?と、ふと思ったのです。
私の無知さが故、そういった面での解釈が明確にできないのがお恥ずかしいですが、今、この演目を演じる意味というのも少なからずあるのでは…?と感じました。

1回目見たときは、勿論、モリーナが所長に言われてヴァレンティンに探りを入れてるなんて知らない状態で観ていました。
だから1番最初の薬入りのオートミールのくだりで、なんであんなにモリーナは大げさに咀嚼してるんだろう??なんで不思議な食べ方してるんだ??と思ったら…という感じでした。
他にも2回目観たとき、前半でモリーナがヴァレンティンに彼女の事を聞きます
「なんで俺に彼女がいる事を知ってるんだ」
「それが当然の流れじゃない」
ああ、ここも伏線だったんだ…と。
彼女の話を聞き出すのもモリーナの役目だから。でも後半には「話さないで!」という。


まだ2人の心が通じ合っていない時には
モリーナがヴァレンティンの事を聞きたがり、ヴァレンティンはモリーナに話したがらない。
通じ合い始めてからはヴァレンティンは話したがり、モリーナは聞きたがらない。
その移り変わりも、どこか微笑ましく見えたのはヴァレンティンがどんどん心を開いていくからなんだろうなぁと思いました。


ヴァレンティンとモリーナの関係は、チープな言い方をするとお姉さんと近所の弟的存在…みたいな、そんな感じにも見えました。
ヴァレンティンを大倉さんが演じると、冷静だったり心が比較的穏やかな時に、静かに呟く声色や表情はとても大人で、時にいけ好かない憎らしさもあるんです。
が、少し声を荒げたり心が乱れたりすると、怖い言葉を使っているはずなのにどこか幼さが滲み出るんです。
ヴァレンティン自身は「自分は勤勉であり、頭が切れる存在だ、客観視、俯瞰視、分析ができるんだ。」と思ってる反面、純粋さや憎めなさが出てるといった感じ…
でも、その、一種の「かわいらしさ」「あどけなさ」が途端に色気にも見えるんです。
こう、知識を、たくさんのことを、知りたくて知りたくて仕方なくて、それを知ったら人に教えたくて教えたくて仕方ない…見たいな一面もあって…

渡辺いっけいさんのご友人の加納幸和さんのツイートに「大倉忠義くん、無垢な色気が良かったな〜。」とあり、「それだあ!!!」となりました。

正に「無垢な色気」。
憎んでも憎みきれない、人を惹きつけてしまう存在…
モリーナもそんなヴァレンティンに惹かれてしまったのかなぁと…
映画も以前の舞台も観ていないのでわからないのですが、どこか大倉さんらしさも含まれていて、大倉さんだからこそこの憎みきれないヴァレンティンなのかなぁと…
いや、演出及び計算だったら、お三方(鈴木さん、大倉さん、いっけいさん)の素晴らしき恐ろしさでもありますね…

だって、冷静に考えたら私個人としてはヴァレンティンに怒りさえ覚えますからね!?
1回目の観劇がずっといっけいさんの表情を観れる位置だったので、まんまとモリーナ派なので…

それでも憎めない存在でいるヴァレンティンがすごいです…

さて、モリーナ派と言いました。
いっけいさん、本当に素晴らしいです…
もちろんモリーナ自身が話しているときは勿論、ヴァレンティンの言葉を受けているときの表情、全てにおいてモリーナがそこに生きていて…
このモリーナの感情を、表情を読み取れないなんて、なんてヴァレンティンはひどい男なんだ…と思ってしまうくらいに健気でした。

特に、マルタに宛てた手紙を代筆しているときのモリーナに私は1番泣きそうになりました…

マルタへの愛は勿論、「理解してくれるのは君だけだ」「ここには自分1人しかいない」といった、モリーナにしてみればショックな言葉ばかり…(このセリフ、とても曖昧です。違ったらすみません)
それをひたすら書くモリーナ。
ヴァレンティンは虚空を見つめてマルタにだけ向けて話すのに、モリーナはヴァレンティンから発せられる言葉一つ一つを受け取っているんです…
受け取っているからこそ身体を拭いてあげられる事に気づいたんでしょうが…

せっかく心の内をさらけ出してくれたヴァレンティンの言葉を、辛くなりながらも一生懸命代筆したのに、それも破られてしまうわけで…
複雑だなぁ…と私自身苦い顔になりました。


あらすじを見るだけだと、とても重苦しい、難しいという先入観がありますが、
モリーナとヴァレンティンのコミカルな掛け合いに何度もクスクスとさせられました。


特に千秋楽公演はお二人が心から演じることを楽しんでいるのが伝わり、過去に見た二回よりも更にコミカルに、たまにいっけいさんが荒ぶりすぎて足を滑らせるハプニングでまた笑いが起きたり…と見ていて楽しく、幸せになるシーンも多くありました。

だからこそ、だからこそ、その反動で辛くなる…そう思いました。

表面上だけというか、明確に現れているセリフなどで見ると、ヴァレンティンの辛さが前面に出ている印象なんです。
悶え苦しんでいたり、「何故こんな目に合わなきゃいけないんだ」と悲しんだり、癇癪を起こしたり…そして、衰退していく…

でも、それでも私はモリーナの辛さの方が痛かったです。
それを表に出しきらない、ある種の弱さと強さが…

所謂ベッドシーンなんかも、最初の導き以降はヴァレンティンの声しか聞こえないんですよ…
声を出さないようにしてるんだな。と。
ヴァレンティンが本当に求めているのは自分じゃないから、ヴァレンティンのために、声を押し殺してるんじゃないかと…
なのに、なのに、終わったあと、幸せそうで… 

その翌日、その時の気持ちを「もう危険じゃないと思った」と、共感しあった2人。
それに喜び合う2人。
そんなにも、そんなにも日々危険を感じて生きてきたのかと…

ラストにかけてはもう、正直感情も表情もごちゃ混ぜすぎて、どう汲み取るのが正解なのか全くわからないほどでした。
出られることが嬉しいのか、悲しいのか、
いなくなってしまうのが寂しいのか、希望に繋がるのか、
相手のためになるのか、自分のためになるのか、
自己的に嫌気がさすのか、相手に優しくできるのか、
きっと、きっとですが、お互いにお互いの感情もごちゃ混ぜで、なにが自分の中で第一優先なのかわからなくなってるんじゃないか。という印象でした。

そこで最後にヴァレンティンがモリーナに約束させる


「みんなに君を尊敬させるんだ、利用させたり、尊厳を傷つけさせたりしちゃいけない」


そこでモリーナに変化が起きたような、そんな感じがしました。
大袈裟かもしれないし、間違ってるかもしれませんが、モリーナが、ヴァレンティンからもらった唯一のものが「誇り」なのかな…と…

そこから悩んで言いかけてを繰り返して、
別れのキスをしてもらい、決心したモリーナの表情には「誇り」があるような気がしました。
これも確かじゃないですけど、その表情に、さすがのヴァレンティンも、健気さと愛おしさを感じたのかな…と…
だから、2回目のキスに、より「愛情」を感じました。


最後、お互いの終わりをお互いに語り合うシーン、
そこで初めて異世界を作り出すような、テクスチャがかかったような照明に切り替わるのが印象的でした。
ヴァレンティンの話すモリーナのその後と最後。
ああ、モリーナは、モリーナらしく、彼女としての誇りを胸に生き、終わりを迎えたんだな。と。悲しむどころか、どこか安心した自分も居ました。
でも、それを語るヴァレンティンの目は涙が溜まってるように見えました。
(千秋楽は泣いてたようですね。袖で涙を拭ってました)
そこも、ヴァレンティンのズルさだなぁなんて。思ってしまいました。

逆にヴァレンティンのその後を話すモリーナはヴァレンティンを諭すように、あやすように、子守唄のように聴かせてる印象を受けました。
「いい夢をみてね」
そんな風に。
ヴァレンティンはモリーナの最後を語りましたが、
モリーナが語ったのはヴァレンティンの最後ではなく、夢のお話、しかも希望のある終わり方をします。
これも、モリーナの優しさなんだろうな…そう感じました。

その後、監獄の先の白い世界、外の世界に向かって歩くモリーナの後ろ姿は堂々と、誇りに満ちていて、白い世界に踏み出した後の足は、モリーナのお母さんと同じ、"十時十分"で地面を踏みしめていました。
母親から生まれたこと、自分が自分であること、全てが誇りであるかのように。



きっと、語りきれていない、取りこぼしている箇所も、至らない箇所もたくさんありますが、これが私が感じた、蜘蛛女のキスでした。


舞台が大好きな私ですが、やはり、好みもあり、なかなか蜘蛛女のキスの様に、一見難しいお話はキッカケがない限り、手を出すことは殆どありません。

しかし、「蜘蛛女のキスを観ることができて、知ることができて良かった。」そう思えたからこそ、キッカケをくださった大倉さんに感謝です。

そして、カーテンコールで大倉さんのことを優しい表情でみるいっけいさんと演出の鈴木さんがとても印象的でした。
大倉さん個人の持つ、人を惹きつける魅力と、いっけいさんと鈴木さんの愛溢れる優しさを垣間見れた気がしました。

千秋楽の挨拶でいっけいさんが「今日をもってヴァレンティンの中の人を皆さんにお返しします」と宣言(?)して、とても笑顔にさせてもらいましたが、本当に、いっけいさん。ありがとうございました。
それこそいっけいさんのお芝居を生で観るなんて、思ってもみなかったし、想像以上のお芝居を観せてくれたこと、感謝しています。

大倉さん、いっけいさんをはじめとした演出家の鈴木裕美さん、スタッフ、関係者の皆様、お疲れ様でした。そして素敵な時間をありがとうございました。
私は今回蜘蛛女のキスを観劇することができ、幸せでした。


以上、蜘蛛女のキス、感想でした。
ひどく拙く、長い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。




以下、感想でも何でもない、ただ残しておきたい事なので、暇で暇で、気が向いた方だけどうぞ。読んでも読まなくても損得何もございません。









今回、蜘蛛女のキスの詳細が発表されて、私は取り乱しました。とてつもない縁の巡り合わせを感じたもので…
いや、感じたのは私だけなんでしょうが…

今年の頭にエイトさんにハマり、大倉さんにハマった私。
大倉さんは"映像の人"という印象。
舞台沼出身で、今も舞台が好きで、しょっちゅう舞台を観に行ってますが、「まぁ、大倉さんは映像の人だから舞台の心配はないかなぁ…」と軽率にハマったら蜘蛛女のキス発表。
ビックリしました。
8年?9年?ぶり??の舞台。しかも初主演で2人芝居…

更に演出には「鈴木裕美さん」…

私が今もずっと好きで8.9年程追っている和田正人さんという俳優さんがいます。代表作はごちそうさん校閲ガールでしょうか。
※横山さんのドラマ「ザ・クイズショウ」にもレギュラー出演しておりました

私が和田正人さんを知り、ハマった時、彼の初主演舞台がありました。
「風が強く吹いている」
その演出も鈴木裕美さんだったんです。

初めて和田さんを生で観た、舞台「風が強く吹いている」は、たくさんの舞台を観た今でも、1番大好きな舞台なんです。
そして、私の趣味が「観劇」になったキッカケの作品でもあります。

推しの初主演舞台と、推し(担当?)の初主演舞台、両方の演出が鈴木裕美さん… まぁ、行くしかないなと。
そして、幸いにも、大倉さんを初めて生で観るのが蜘蛛女のキスとなりました。

更に、蜘蛛女のキス原作本(未読破)をふと観ると、「解説 三浦しをん」さんの名前が。

三浦しをんさんは先ほどの「風が強く吹いている」の原作者でもあります。

*(^o^)/*

勝手に縁を感じずにはいられませんでした…

蜘蛛女のキスを観終わった後、「何故だか優しい気持ちになれた…」とすぐに思ったのですが、ふと、風が強く吹いているを観終わった後も優しい気持ちになった事を思い出しました。
風が強く吹いているは、ハッピーエンド色が強いですが、悲しさや寂しさがちょっぴり残って終わる、でも、やっぱり優しい気持ちになる…そんな舞台でした。

たくさんの演出をなさっている鈴木さんの、たった2つの作品しか拝見していないですが、なんて優しくて、暖かい作品を、細かい心情描写や大胆な演出を用いて描くんだろう。と思いました。

千秋楽、カーテンコールで上手に出てきた鈴木さんの表情は、とてもとても優しかったです。
厳しく指導される方という記事も拝見したことがありますが、優しいからこそなんだなと…

私にとって大きく印象に残る舞台を2つも手がけた、そして私に舞台の魅力を教えてくれた鈴木さん、本当に、本当にありがとうございます。感謝です。

最後までお付き合い頂きありがとうございました。


2017/06/18 よしみ